岩波ホールを数年ぶりに訪れた。
今年、閉館するらしい。
大規模な映画館で上映されない、
埋もれた名画を放映してくれる、
こういう映画館は貴重だ。
小説でいうところの純文学的な、
美しい映画をたくさん見せてくれた。
今回は、表題の映画を見た。
バングラデシュの衣類工場で働く女性をメインにした内容。
低賃金。長時間労働。法律の不徹底。省庁の腐敗。労組。
かつて、バングラデシュの女性と一緒に働いたことがある。
結婚して、ご主人が来日するに合わせて来られた。
ダッカ大学の法学部出身のエリートだった。
日本でいう東大法学部だ。
同級生は、みな国で働いているということだった。
妹は医師。
来日できるくらいだから、かなり裕福で、この映画には出てこないタイプの女性だ。
食事などのサニタリー系の時間以外は、全て勉強していたそうだ。
勉強できること自体が、裕福の証だろう。
翻って、裕福だが、裕福ゆえに勉強しなくなっている日本が浮き上がる。
いかに楽して、いかに効率のいい人生を歩むかが、人生の中心にある気がしてしまう。
国の発展と国民の発展は、相関する。
国が発展期にあるとき、国民は本を読み勉強する。
国が成熟期にあるとき、国民は怠ける。
発展期にある国の人を見ると、
なんだかまぶしい。
羨ましくなる。
バングラデシュの映画の話が、どこかへ行ってしまった。
バングラデシュの女性たちは、
長時間の労働で、なんとか生活している。
いや、生活できないから、給料にいつも不満を持っている。
しかし、文句を言っても、聞き入れられない。
1日2650枚のTシャツを作っても、
給料は、海外での販売価格で3枚分だ。
月収5400円くらい。
※2018年、1万400円が最低賃金に改正
なんだか、このまま服を着ていていいのか悩む。
服を買わなければ、彼女らの仕事はなくなるだろうけれども、
買えば、それを助長しているような気もする。
彼女たちは、文句を言っても変わらない状況にある。
そこで社会活動家が登場。
彼女らに労働組合を組織することを提案。
法を携え、労働省に向かうも、なかなか返答がない。
工場側が労働省に手を回していた。
脅迫に近い形で、認可のサインを得て、
労働省の廊下を歩いてくる主人公の女性。
カメラをかわすように、横を通り過ぎたところでエンドロール。
法が機能していないバングラデシュで、認可のサインを得たからといって、
未来が明るいとは思えない。
これから訪れるであろう多難に、勇ましく立ち向かう女性の姿は、
逞しい。
バングラデシュの、いち都市の話ではあるけれども、
多国籍企業が、いかに低賃金の労働者に支えられているか。
多国籍企業の、低賃金の働き手を求めて彷徨う「渡り鳥的経営」の浅ましさを思う。
先進国は、少なからず、発展途上の国に支えられている。
搾取しているとも言えるかもしれない。
そんな我々は、コーヒーを飲みながら、
カタカタとMacに駄文を打ち付けていていいのだろうか。